SATOYAMA BASKET - MISIA × 生物多様性 -


学ぶ - TALK: MISIA × C.W.ニコル(作家、環境保護活動家、探検家)

TALK: MISIA × C.W.ニコル(作家、環境保護活動家、探検家)

cmenu-32-p01.jpg

対談は2010年7月、長野県黒姫高原にある、アファンの森で行われました。アファンの森を訪問した様子については、こちらをご覧ください。

森の「音」を聴く

C.W.ニコル(以下ニコル) 森から見ると、生物多様性が大切です。「健康な森」というのは、低い木、大きな木があって、まだらに光があって、空気が通っている。手入れされていない森は、健康な森ではないんですね。このアファンの森は、20年の汗と涙の結果なんです。風が通るようになったことで、鳥も来るようになりました。風がないところでは、鳥の鳴き声もしない。

MISIA 最初は?

ニコル 藪を刈って、病気の木を伐りました。そして光を通しました。健康な森というのは、10%くらいの光が、下まで通っています。下まで光が通らないと、下地に緑が生まれてきません。森は人間社会と一緒なのだと思います。いろいろな植物や動物が必要です。現在、アファンの森には70種類以上の木が生えています。木の種類は、始めにこの土地を購入した時より増えました。原生林のときから残っている木は、ブナやトチの木ですね。ここアファンの森では、また、木を植えるときは、同じ遺伝子を持つ木を入れるよう心がけています。

 

cmenu-32-p03.jpg

ニコル MISIAさんが言われていることをこの間読ませていただきました。子どもの周りの環境の大切さを言われていますね。コミュニティがきちんとあるから、人は落ち着くということがあるかと思います。森も同様ですね。森に入ると、虫が寄ってくる。仲間が来たと思っているんですね。例えば少人数で森に入ると、鳥も寄ってきます。一人だと動物も来る可能性がある。

MISIA 私は生物多様性を今、日本で紹介しようとしています。特に都会にいると、自然と密接に生活することが少ないので、生物多様性をイマジネーションすることも難しいことがありますよね。森の中でいろいろな環境を知ることが大切なのだと思います。

ニコル 例えば町では、ペットボトルや水道の蛇口から水を飲むことができます。しかし、どこから、この水が来ているのでしょうか。もともとは山や自然から来ている訳です。水の大切さを知る必要があります。環境が破壊されたところでは治安も悪化し、スラムと化しているんですよね。

MISIA 私は長崎県の出身で幼少の頃対馬で育ったのですが、学校の帰りに花や虫で遊んでました。この間、対馬にツシマヤマネコの説明を聞いたり保護活動を知るために久しぶりに帰りました。幼少期にいたのにも関わらず、ツシマヤマネコのこと、あまり知らなかったと思ったんです。
ツシマヤマネコは、人里近くに住んでいるんですね。昔は、奥山という人の手を受け付けない山と人の住む里、その間に里山があって、その里山にツシマヤマネコが住んでいる。自然と人間が共存する場所があり、そこに生物がたくさん棲んでいた訳です。今は自然と動物の場所が二分化してしまうので、たくさんの動物がいなくなってしまったそうです。
対馬のこと学んでから東京に戻ったら、今私が住んでいる東京にはどんな自然や生き物がいるのか、鳥や虫はどんなものがあるのか、考えるようになりました。身近な自然を考える必要があると思います。

ニコル 対馬には私も何回か行ったことがあります。対馬は日本と韓国の間に位置している島ですよね。対馬にはどれくらいいたのですか?

MISIA 10年くらいですね。でも対馬という恵まれた場所にいたことは、外に出てから気付きました。対馬は渡り鳥も多いんですね。日本に飛来する渡り鳥の7割が、対馬に来ると言われています。

ニコル私は英国のウェールズ出身で、子どもの頃からケルト文化に馴染んできました。私の祖母は、ウェールズに小人がいたという話をしてくれました。歌が好きで、リズムをとったり、いたずらで、踊りが好きな小人なのだそうです。
40歳を過ぎた頃、番組の撮影でピグミー族が住む森に3週間ほど滞在することがあったのですが、彼らと会って祖母の話を思い出しました。そして、素晴らしいハーモニーを聞くことが出来ました。森の中で歌うことは、他のピグミーの人々に、私は敵ではないと伝える手段でもあるのだそうです。
僕は森の中で鳥や、カエル、昆虫、動物などいろいろなものが音を作っていること、木の音、小川の流れが、人間のDNAに刷り込まれて、歌を作り出していると思う。

MISIA アフリカに行った時、音楽がとても面白かったのを覚えています。ここ(アファンの森)も同じように、何かが歌っているようですよね。

ニコル 鳥が今は子育て時期なのであまり音を出さないのですが、朝早くに鳴いています。鳥は繁殖期になると、オスが自分を誇示するためにやかましいくらいに鳴いているんですよね。森の様々な音や鳴き声がハーモニーを作り出し、音楽を作り上げていると思います。

生物多様性を未来に残すために。

MISIA COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)のことを話したいと思います。

ニコル 日本という島国は、南北に長いので、北では流氷が、南ではサンゴ礁が見ることができます。海岸線は、アラスカを除いたらアメリカの海岸線より長いんですよね。山には緑もたくさんあります。生物多様性が非常に豊かな土地だと思います。各地域では独自の植生があり、日本の文化にも影響を与えています。しかし現在、生物多様性が失われ、自然が傷ついています。鮭が川を上らなくなる川。健康的な森が失われ、里山が放置され藪になってしまう。同じ状況は現在アジア各国で見られます。自然を回復させていく国として、日本のリーダーシップを期待したいと思います。

MISIA 日本から生物多様性についてメッセージを発信することに大きな意味があると思います。日本には八百万の神様がいて、あらゆるところに自然を敬う文化があります。そういう気持ちを思い出し、生き物から命をいただいている。それに「ありがとう」の気持ちをもっていること、そういった事実を知っていることが大切だと思います。世界中の偉い人に、そうした私たち一人ひとりのメッセージを伝えていければと思います。

ニコル その通りですね。この森には、世界各地からお客さんがきます。英国のチャールズ皇太子もいらしたことがあります。ある時、イスラエル大使から「あなたはエデンの園を作ろうとしているんですね」と言われました。とても嬉しかったです。
以前エチオピアの国立公園作りに携わったことがありますが、その時は戦争で、森の9割が破壊され、多くの生物が絶滅しました。自分の祖国であるウェールズでも、産業革命後、自然が破壊されています。
48年前に日本に初めて来たとき、「こんなに美しい国があるのか」と驚きました。しかし、この黒姫で暮らして30年になりますが、木が切り倒され、ゴルフ場になり、自然が壊されているのを目の当たりにしてきました。是非あなたのような方に率先して伝えてほしい

MISIA 自然を愛して。

ニコル そして楽しく。

MISIA それが一番ですね。

ニコル 飲み水があり、食べ物がある。「いただきます」「ご馳走さま」。このふたつの言葉は命あるものをいただきますと言う意味ですよね。

MISIA もともとは与えられたものを「頂く」という意味なんですよね。

ニコル 世の中を良くするために、これから何ができるでしょうか。

MISIA まずは知ること、そして考えることだと思います。知って初めて生物多様性のことを理解すること、考えることができます。

ニコル 関心を持って、感動する心を持つ。そしてそれをさまざまに伝えていくんですね。
雨が降ると森が喜ぶんですよね。僕はこの国を愛して、この小さな森を作ってきました。そしてこの森を未来に残していきたいと思います。

MISIA 私も歌で、メッセージを残していきたいです。

Profile
Profile: C.W.ニコル
英国南ウェールズ生まれ。17歳でカナダに渡り、その後、カナダ水産調査局北極生物研究所の技官として、海洋哺乳類の調査研究に当たる。以降、北極地域への調査探検は12回を数える。 1967年より2年間、エチオピア帝国政府野生動物保護省の猟区主任管理官に就任。シミエン山岳国立公園を創設し、公園長を務める。 1972年よりカナダ水産調査局淡水研究所の主任技官、また環境保護局の環境問題緊急対策官として、石油、化学薬品の流出事故などの処理に当たる。 1980年、長野県に居を定め、執筆活動を続けるとともに、1986年より、森の再生活動を実践するため、荒れ果てた里山を購入。その里山を『アファンの森』と名付け再生活動を始める。 2002年、アファンの森』での活動や調査等をより公益的な活動を全国展開するために、「財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団法人」を設立し、理事長に就任。現在、東京都エコツーリズム・サポート会議委員(2003年~)、環境省 エコツーリズム推進会議委員(2003年~)、京都大学フィールド科学教育センター社会連携教授 (2005年~)、環境省地球いきもの応援団(2010年~)などを務める。

アファンの森についてはこちら

English 日本語 感じる 学ぶ 識る 読む 繋がる すべて見る