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識る - ヤンバルクイナ -

【学名】Gallirallus okinawae
【英名】Okinawa Rail
【分布】沖縄県北部
【環境省レッドデータブック】絶滅危惧IA類(CR)

 

「ヤンバルクイナ」と聞いて、鮮明にその姿を思い浮かべられる人はどのくらいいるだろうか。私自身、名前は知っているがそれがどんな動物なのかは知らなかった。絶滅危惧種のレッドリストを見ていて、その不思議な名前が目にとまり、今回のテーマにした。

 ヤンバルクイナは世界中で沖縄県北部のやんばる(山原)地域にしか生息していない貴重な鳥。全長約35cmとあまり大きくはない。胸からお腹にかけての白と黒のきれいなしま模様と、真っ赤なくちばし、目、足が特徴だ。体重に比べて翼の面積が小さく、翼を動かす筋肉も発達していないので、ほとんど飛ぶことができない。なので、土のなかの小動物をほじくり返して食べたり、木に登ったりする変わった鳥だ。

もともと、沖縄にはヤンバルクイナの天敵になるような肉食動物が少なかった。飛んで逃げる必要がなかったため、ヤンバルクイナは羽より足の筋肉が発達し、走り回ってエサを捕まえる鳥に進化したといわれている。

 発見は1981年と比較的最近で、当時この大型新種の発見は、ほとんど飛べないという特異な生態ということもあり、大きな話題となった。1982年には国の天然記念物として指定されが、その個体数は1985年の1,500~2,000羽から2005年には717羽にまで減少し、絶滅危惧種として知られるようになった。

 

飛べないために、ハブの駆除のため人間によって放たれたマングースや、飼い猫として連れてこられたノネコのような陸上の肉食動物が、ヤンバルクイナにとって大きな脅威となっている。特にマングースは、生息分布がほぼ一致していることから、ヤンバルクイナの減少の主な原因であることが考えられている。

また生息地であるやんばるの森は、年間約200ヘクタールの規模で伐採が行われ、林道やダム建設による生息地の破壊、分断も進んでいる。整備された林道は、本来は湿潤なはずの森を乾燥させ、交通事故死やヒナの側溝での転落死の件数も増加している。

特にヤンバルクイナの交通事故は2009年の20件から年々増え続け、2012年は12月11日までの時点で42件確認されている。事故によって失われた命は、運転をする私たち人間が少し深く注意をすれば失わなかった命かもしれない。それにもし、そこで死んでしまったヤンバルクイナが親鳥だった場合、その子どもたちも生きていくのは難しくなってしまう。

 

ヤンバルクイナの保護活動として、ヤンバルクイナの人工飼育やマングースやノネコの捕獲事業が行われている。また、新たなノネコを発生させないために、ネコにマイクロチップを埋め込んだり、避妊・去勢手術を行ったり、適正飼育の指導なども行われている。

また交通事故の防止のため、道路に「クイナフェンス」とよばれるフェンスの設置や、設置されている区間のうち、移動分断に繋がる懸念のある場所には「クイナトンネル」とよばれる横断通路の設置が進んでいる。他にも、運転者に向けて看板を設置することで注意喚起を行っている。

 

人間の都合で動物を移入させ、もとの生態系を脅かし、もともといた動物の絶滅が危惧されたら今度は人間が持ち込んだ動物を悪者にし、捕まえる。1つの種を守るために他の動物たちが殺されてしまうなんてとても悲しいことだ。人間が少し介入するだけで、こうした負の連鎖が止まらなくなってしまう。

私たちに今すぐできることに、安全運転をすることがある。ヤンバルクイナは他の鳥と違って飛べないため、車をすぐによけることはできない。ヤンバルクイナに限らず、固有種の動物たちはずっと昔から今の地域に住んでいる。人間や車はずっとあとに彼らの住む場所に入れてもらっているのだから、彼らを尊重する運転を心がけるべきだ。

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