今月の本 : 「いきものがたり」
生物多様性。って、何?
これが、「生物多様性」を初めて聞いた人の大半の感想だ。
環境省の調査でも、「気候変動」という言葉と比べて、生物多様性の言葉を「聞いたことが無」かったり、「意味が分からない」人の数は多い。
どうしてだろう?
ひとつには、「気候変動(climate change)」や「地球温暖化(global warming)」というコトバが、既に発生している危機的状況を言葉で表しているのに、「生物多様性(biodiversity)」は、私たちが守るべき状況を指しているからではないかと思う。
守るべき状況、自然の恵みがキーワードであるために、却って問題点が分からない。
生物多様性を、どうしたらよいの?
そんな気持ちに答えてくれたのが、今月の本、いきものがたりだ。
「いきものがたり」は、生物多様性にまつわる11編のストーリーをベースに、イラストや、詩、先住民の言葉、専門家の解説などさまざまな方法で解き明かす。その根っこは、私たちに「感覚で理解する」ことを求める試みだ。
難しい言葉じゃない、頭で理解するのではない、心でとらえてみる。
たくさんのいきものや命に支えられた私たちの生活。
その豊かさが、地球温暖化や乱獲、開発で消えている。その原因は、私たちにある。
そうした事実を、説明や理屈ではなく「伝えていく」こと。
生物多様性の難しい「伝える」ことを主眼に置いた、「いきものがたり」。
ぜひ読んでみてください。
著者:養老 孟司 , 本川 達雄 , 藤田 紘一郎 , セキ ユリヲ , しりあがり 寿 , 五箇 公一 , さとう あきら , 松田 裕之
編集:Think the Earth Project
監修: 山本 良一 (東京大学教授)
発行:ダイアモンド社
発行年:2007年