日本橋から環境を考える

cmenu-39-p01.jpg 中央通りの花壇づくり

SATOYAMA BASKETのウェブサイトを運営する中で、都会から生物多様性をどのように考えるか、と言う質問を良く受けるようになった。

町で生きものが暮らすようになるためには、生きものが暮らせるような環境作りが必要だ。ビオトープ作りや生き物の通り道を考えることなどはその典型だろう。

他方、これまで都心部で環境がまったく考えられてこなかったわけではない。1970年代の公害の被害は都心部の大通り沿いの並木の梢を枯らしていたり、昔見かけることができた動植物を都心で見られなくなったことは、繰り返し指摘されてきた。

近年は都市開発を進める際に環境や景観への配慮は不可欠だし、地域社会の理解と協力抜きには考えられない。今回は景観づくりから自然との調和を考える試みを行ってる日本橋・中央通のはな街道を覗いてみた。
 

はな街道とは  cmenu-39-p02.jpg


中央通りを季節の花々で彩る「はな街道」は、名橋「日本橋」保存会・日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会が周辺町会の協力の下、国土交通省東京国道事務所と官民パートナーシップで行っている地域の美化活動だ。

もともとは江戸開府400周年を記念して、通りをきれいにするために国土交通省が1年間の期間限定で、通り沿いの低木を花に植え替えたことから始まった。花に変えたことで街並みがきれいになった、と好評だったことから、「はな街道」実行委員会を組織化し、国土交通省東京国道事務所と協議の上、『中央通り「はな街道」フラワー・サポート・プログラム』を実施したことから始まった。4年前にはNPO法人として「はな街道」が設立した。現在もJR新日本橋駅から日本橋を超えて京橋駅までの約2キロの長さにわたり、中央通りを花で飾っている。

活動の中心は地元ボランティアを中心に行政も参加する花植え・水やり・清掃活動だ。江戸の町にふさわしく、活動は、「水奉行」と「花奉行」と呼ばれている。花奉行が、花壇に季節の花々を咲かせるために必要な資金を提供される方、水奉行が地元沿道の町会員の方による水撒きや花壇の手入れをする人々のことだ。特にこの水奉行抜きには花壇の維持は不可欠、と、NPO法人はな街道理事の中島さんは話す。
 

cmenu-39-p03.jpg 子どもたちの参加

この日は城東小学校の小学5-6年生18人が花の植え替えに参加していた。体操服姿で現れた小学生は、これまでに花の植え替えを経験していることもあり、非常に手慣れた手つきで花の植え替えを進めていく。大体50メートルあまりの花壇を20分余りで植え替えを終了させた。

花の植え替えには沿道の老舗や企業だけではなく、地元の子どもたちも参加している。城東小学校だけではなく、常盤小学校も参加し、交代で花の植え替えをしているのだそうだ。子どもたちにとっても自然に親しむ良い機会となる。「始めは子どもたちに手袋など用意しようかと思っていたんですが、学校から『そんなものは要りません』と言われました。実際その通りだったんですよね」と中島さんは話す。

花壇ができたことで、沿道に虫が来るようにもなった。「はな街道ができることで、地元の方や企業の方が自然に親しむ機会ができました。特に自然に対して優しい気持ちにもなったと思います」。

はな街道はただ花を植えているだけではない。工事などで花壇が使用できない場所では、檜原村にある「中央区の森」で切り出された間伐材を利用したプランターカバーを設置している。江戸の伝統にも配慮して、プランターカバーは格子模様になっているのだそうだ。

都心部から生物多様性を考えることは難しい。しかし中央通りの試みは、景観保全の試みからさらに間伐材の利用など、自然を考えるきっかけ作りは広がっている。

リンク:はな街道