池田祐子
屋久島町立屋久杉自然館
受付・解説
昭和19年(1944年)5月、地元で生まれ現在に至る
屋久杉自然館は平成元年にできた町立の博物館です。屋久島が世界遺産に登録される前から数多くの来館者のみなさんに屋久島の自然や屋久杉についてお伝えしています。
昨今縄文杉に会いたいという観光客が増えています。7,200歳とも推定されている縄文杉を見たいというのが人間の心理なのでしょう。しかしながら、スギという植物もこの屋久島の豊かな生態系の中のひとつでしかありません。
黒潮のただ中にあり1,000メートル級の山々がそびえる屋久島は、山岳部で年間10,000ミリという雨に恵まれ無数の植物に満ち溢れています。多くの植物が育つ土壌が海をも豊かにし、近海にはたくさんの魚が群れ集まるのです。
縄文杉もたった一粒の種でした。島をうるおす雨が小さな種を発芽させ、今や巨大な枝や幹にたくさんの植物が根を降ろし生命を育む…「水」という大きな生態系のもとスギも他の動植物もいのちを紡いでいます。
まさに人間もその中のひとつ。わたしたちは自然に生かされているということを忘れてはいけません。屋久島というところは生活の場そのものが自然と隣り合わせで、そのような仕組みを肌で感じることができる理解の容易なところだと思います。
わたしはこの島へ移り住み十数年が経ちました。はじめは山・森・沢に心躍らせ休日毎に屋久島の魅力を満喫しに出かける日々でしたが、ここのところもっぱら里地での暮らしを楽しんでいます。花や野菜を育て、ニホンミツバチから蜂蜜を分けてもらい、ヤマガラや蛍、コウモリまでもが住人です。いろいろな恩恵を受け、そしてできるだけのお返しを心掛けながら暮らしています。