「さんご畑~陸上のサンゴ礁~」を訪ねて

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<愛しいキャラクターがお出迎え!>

 

那覇空港から車で約1時間。沖縄県読谷村(よみたんそん)に位置する「さんご畑~陸上のサンゴ礁~」は、美しい沖縄の海に囲まれた、静かな施設だ。

2012年2月、サンゴ礁の養殖に世界で初めて成功した人に会いに行った。「サンゴ畑」を経営する金城浩二さんだ。「サンゴの養殖屋さん」とも呼ばれている、地元で知らない人はいない有名人だ。2010年に公開された映画「てぃだかんかん〜海とサンゴと小さな奇跡〜」のモデルとなった人物でもある。

サンゴ礁とは、サンゴ類などの石灰質の骨格を持つ生物が作り上げた地形のこと。さまざまな形のサンゴや岩が作る複雑な空間が、魚類、貝類、甲殻類、海草藻類などの多種多様な生きもののすみ場所となっている。そのためサンゴ礁は生物多様性がとても高いところとして知られている。沖縄県では、辺野古・大浦湾でもサンゴ礁が広がり、さまざまな生きものが暮らしている。

「小さい頃から見てきた沖縄の海を再生したい」との想いから始めたサンゴの養殖。専門家や研究者からは「無理だ」「不可能だ」と言われていたことを成功させた。

サンゴを植え始めて14年。現在「さんご畑」、陸上の小さな海、サンゴ礁と言われる場所には約10万株、120種類のサンゴとそこに住む200種以上の生き物がいる。スタッフは金城さんご夫婦を入れて9人。その内、サンゴ礁を海に植えるスタッフは4〜5人いる。今まで植えた株は、5年で3~4万株。今では養殖しているサンゴ礁は5月末〜6月、ここのさんご畑で毎年卵を産むようになったそうだ。

施設には、金魚鉢のような小さいものから大きなプールまで全部で21のプールがある。それぞれには色とりどりのサンゴ礁が養殖されており、大きい溜池は大小の魚も暮らしており、まるで本物の海のようであった。そこは沖縄の民謡が流れる場所で、とても優しい空気が流れていた。

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「久しぶりにこんなに真剣にサンゴの話を聞いてくれる人が来てくれた」とMISIAの訪問を喜ぶ金城さん。

まず案内して頂いたのは、5cm程度の「サンゴの苗」を育てる「サンゴの幼稚園」。そこには、魚やタニシ、亀までいて海と同じような環境を作るべく様々な「スタッフ」が働いていた。「サンゴの幼稚園」には、水槽の中に小さいプレートに載せられたサンゴが綺麗に並べられていた。これらサンゴは、水槽の中である程度の大きさまで成長させる。そうして大きくなったものを海に移植するのだそうだ。

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始めは、早く成長して欲しいとの思いから、大きくなった株を海に植えていたそうだ。12月くらいに植えると、5月までには根付く事はできるのだ。しかし、台風などがきたときに全て流されてなくなってしまったそうだ。

そこで、5cm程度の小さいサンゴを海に植えたところ、海の潮の流れなどに合わせて根付くようになった。そうして根付いたサンゴはその後順調に海の環境に合わせて成長していき、やがて大きいサンゴとなったのである。失敗を繰り返し、今のやり方ができたのだ。

 

沖縄からみえる日本の海の豊かさ

沖縄に限らず、日本の海洋は豊かな生物の多様性を持っている。2010年、世界の25の海域に住む海洋生物の多様性や個体数を10年にわたって調査してきた国際プロジェクト、「海洋生物センサス」の調査によると、オースラリアと日本の海がそれぞれ3万3000種と、世界で最も多様性の高い海だと指摘している。

サンゴ礁はその中でも豊かな生物多様性を保持する場所でもあった。沖縄の豊かな食生活を彩る海産物も、ここサンゴ礁に育まれて培われたものだ。

その豊かなサンゴ礁は、しかし1972年本土復帰以降の数々の開発や、1998年の白化現象やオニヒトデの食害などの影響を受けており、健全な珊瑚群集も減少の恐れに常にさらされている。

その中で必要なことは、一人でも多くの人がサンゴのことを知り、関心を持ち、保全のための第一歩に参加するきっかけをつくることだ。

 

うるまるの誕生へ

「昔からある珊瑚をなぜ守られないのか」と考えたときに、直接的に誰にも利益が生まれないから、価値が持てないから、という問題点が見えたと言う。

しかし、一方ではサンゴ礁の価値を知っている人や守りたいという思いを抱く人もいる。そんな人たちのために金城さんは、「やりたい人たちがやれる仕組みをどうやって作っていくか」ということも考えている。サンゴ礁がいかに貴重な生物であるか、を多くの人に知ってもらいたい気持ちは年々強くなる。サンゴ礁の世間的な水準をイルカのランクまで持ち上げたいと話す。そして出てきた案は、「そうだ!サンゴ礁のキャラクターを作ろう!」となり、できあがったのがMISIAデザインによる「うるまる」だ。

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サンゴ礁キャラクターの名前「うるまる」は、沖縄の方言である「うるま(=サンゴ礁)」から名付けられた。

サンゴ畑での名物キャラクターとなり、サンゴ礁の価値を知ってもらうきっかけのひとつになれれば、と願う。

 

●さんご畑~陸上のサンゴ礁:http://www.seaseed.com/sangobatake