今月の本:「ナマケモノのいる森で」
しかけ:アヌック・ボワロベール / ルイ・リゴー
ぶん:ソフィー・ストラディ
やく:松田素子
発行:アノニマ・スタジオ(2012年)

 

小さいころ、飛び出す絵本が大好きだった。恐竜が飛び出したり、花が咲いたり、いないいないばぁができたりする絵本たちを、繰り返し飽きずに眺めていたのが懐かしい。

オトナになって、絵本そのものに触れる機会もめっきり減っていた。そんな中で出会ったこの「飛び出す絵本」には、すっかり泣かされてしまった。

ページを開くと、森が飛び出してくる。

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ぱっと見るとただの森。でもよーく見ると、鳥がいて、ハリネズミがいて、カメレオンがいて、ヒトがいて…たくさんの生きものがいる。そしてもちろん、ナマケモノも。

しかしそんな豊かな森は、ページをめくるごとに失われていく……外からやってきた人間の手で。

たくさんの木が切り倒され、壊されていく森からは、生きものが逃げていく。その中には、もともと森に住んでいたヒトの姿も。生きものが逃げ出して、どんどん小さくなる森の中にはまだ、のんびり屋のナマケモノが残っていた…!1ページめくるごとに小さくなる森とナマケモノは、どうなってしまうのだろう…?

先月、国の天然記念物でもあったニホンカワウソが、生息を30年以上確認できていないことから「絶滅した」と判断されたことを思い出す。

失われたものが二度と戻らないことを、私たちはいつになったらきちんと理解できるのだろう。失われたものを補う努力を、どれだけ続ける必要があるのだろう。

シンプルな絵本だからこそ。

深く心に響くものがある。

この森とナマケモノのゆくえをぜひ、多くの人に見届けてほしい。