【学名】Lagopus mutus japonics
【英名】Ptarmigan
【分布】本州中部地方高山帯
【環境省レッドデータブック】絶滅危惧ⅠB類(EN)

 

私が中学2年生の時、学校行事の登山で唐松岳という北アルプスに登った際に、頂上付近で崖のような岩場に一羽の鳥を見つけた。それがライチョウだった。そのときはまだライチョウが絶滅危惧種であることは知らず、珍しい鳥がいるとみんなで大騒ぎしたのを覚えている。

私は長野県出身で、ライチョウは長野県の県鳥にも指定されていることから、ライチョウの名は知っていたが、まさかあの鳥が絶滅の危機に瀕しているとは思いもしなかった。

 

ライチョウとは?

ライチョウは、世界的に北極圏に近い寒帯一帯に分布する、寒冷地に適応した鳥だ。日本では本州中部の高山にのみ生息していて、ニホンライチョウは世界で最も南に分布しているライチョウである。1955年には、国の特別天然記念物にも指定されている。

ライチョウは植物質の餌を好むが、その割には足が太く爪が長い。これは岩肌を歩き、冬場には雪を掘って雪の中で生活するための独特な生態である。また、ライチョウは夏場と冬場で体の色が大きく違うのも特徴だ。天敵であるイヌワシなどの猛禽類やオコジョに見つからないために、夏場は岩肌に紛れるように黒、白、茶色のまだら模様で、冬は雪景色に紛れるように全身ほぼ真っ白になる。

ライチョウは警戒心が強く、天候が悪いときは猛禽類を警戒して姿を見せないが、雷が鳴りそうな雲行きになると現れることが多いと言われていて、その行動が「雷鳥」という名がつく理由となっている。

 

絶滅危機に瀕している理由

ライチョウが減少している要因としていくつかあげられる。

 

•     登山者の増加

登山者が増加することによってライチョウの生息環境を破壊している。登山者が捨てたゴミにつられてキツネやカラスなどの捕食動物の生活域が広がっていて、これらの動物に食べられる

•     スキーヤーの入り込み

山スキーをするスキーヤーがライチョウの生息地にまで入り込んでしまっていることによって、ライチョウが安心して住める場所が減り、住む場所を追いやられている。

•     地球温暖化

寒いところでしか生きられないライチョウにとって、気温の上昇は致命的である。気温が上昇して、高山帯が縮小する。これはまさに「生き場所」を失うことを意味しているのだ。

 

 

これらの原因で、現在の生息数は2,000羽と言われているが、部分的に減少している。

人間の介入がライチョウの減少に大きく関わっていることを示す例として、立山では立山・黒部アルペンルートの開通によって、開通前には約250羽いたのが、開通後には約150羽となったという結果が出ている。また、駒ケ岳ではロープウェイの完成後わずか数年で生息しなくなった。

 

私たちがやるべきこと

以上の要因からライチョウの絶滅を防ぐために、私たちにできることがある。1つは登山や観光に行ったとき、登山道を外れないことやゴミを捨てないことなどの、最低限のマナーを守ることである。登山道を少し外れて植物を踏んでしまうだけでも、山の生態系に大きく関わる。少しだけなら、という考えを改めることが大切だ。

そして、もう1つは地球温暖化を防ぐことである。寒いところでしか暮らせない動物たちにとって、地球温暖化は生命にすぐ直結する問題になっているのだ。私たち地上に住む人間には、そんなに1℃や2℃の温度の上昇はすぐには影響がでないかもしれないが、寒い山の上でしか生きれないライチョウにとっては、その少しの温度変化が生息地の減少にすぐ繋がってしまうのだ。

日本のきれいな自然を守り、いつまでも観光地として楽しめるよう、マナーを守り、小さなことから地球温暖化を防いでいくことが重要だと感じた。

 


文責:大妻女子大学 矢部遥佳