【学名】Spilornis cheela perplexus
【英名】Crested serpent eagle
【分布】日本固有亜種;八重山諸島の石垣島、西表島
【環境省レッドデータブック】絶滅危惧IA類(CR)

 

カンムリワシとは?

 カンムリワシはインド、台湾、マレー半島、スリランカ、などアジア大陸の南部やその周辺の島々に生息しており、日本では、沖縄本島から400km以上離れた日本最南西端の八重山諸島に生息しています。カンムリワシは21種類の亜種に分類され、八重山諸島に生息するカンムリワシは、日本固有亜種とされています。

 カンムリという名前が付いている通り、頭には冠羽と呼ばれる黒と白が混じった色の羽があり、よく目立ちます。体長は約55cm、翼を広げると90~120cmになります。湿地、草地がある平地に生息しており、山地帯ではあまり見かけられません。石垣島、西表島では森林に隣接する水田地域で良く見かけられます。ヘビ、トカゲ、カエル、カニ、昆虫などを食料としています。

 ワシは他の鳥と比べると繁殖力が弱く、カンムリワシも一回の産卵で1つの卵しか産みません。食物連鎖の頂点に立つワシの繁殖力の弱さは、自然の生態系のバランスを保つための仕組みではあるものの、絶滅危惧種に指定されているカンムリワシにとって産卵はとても重要なことなのです。

 

減少の理由

現在では八重山諸島全体で約200羽の生息が確認されています。石垣島や西表島ではよく電柱や木に止まっている姿が見られるそうですが、過去に比べると目撃数は半減しています。2012年の生態数調査では、両方の島で各2羽の幼鳥しか確認されておらず、1985年では西表島のみで93羽中13羽が幼鳥だったことと比べると、かなり繁殖数が減少していることがわかります。

 個体数が減少している理由は、カンムリワシの餌場となる水田が人びとの生活様式の変化などによって放棄されたり、住みかである森林や湿地が畑や牧場になったりと環境の変化が影響しています。また2005年頃から大型の台風が度々直撃したことによって、森林の生態系が大きく破壊されたことも原因の一つです。そして近年では、道路で死んでいるヘビやカエルなどを食べようとするカンムリワシが交通事故に遭うケースも増えています。

環境省ではカンムリワシを国内希少動植物種に指定しています。1992年には西表島に国設西表島鳥獣保護区を設定し、保護活動が本格化しました。私達も、石垣島や西表島へ訪れるときには、車での移動に十分注意したいものです。カンムリワシをこれ以上減少させることのないよう、保護活動の重要性がますます高まっています。

 

文責:大妻女子大学 4年 宮本奈央美