オカピ

【学名】Okapia johnstoni
【英名】Okapi
【分布】中央アフリカのコンゴ民主共和国、ガボン共和国の密林など
【IUCNレッドリスト】絶滅危惧Ⅱ類(EN)

 

1000万年前から姿を変えずに生きてきたオカピは、「生きた化石」と言われています。ジャイアントパンダ、コビトカバと並び、世界三大珍獣と呼ばれ、その脚の美しい縞模様からは「森の貴婦人」とも呼ばれています。以前まで、準絶滅危惧種でしたが、現在は、絶滅危惧種に指定されています。

 

オカピって?

体長2m、体重は、オスは250kg、メスはオスよりやや大きく330kgで、体型はウマに似ています。四肢に、シマウマのような白と黒褐色の横縞模様があるのが特徴です。この縞模様は、オカピの生息する密林の辺縁部でカモフラージュの役目を果たすと共に、同種間での目印にもなっています。

多雨林地帯で生活していますが、大きな木で覆われた暗い森より、食物として利用できる若い木や低木が茂る明るい二次林を好みます。ちなみに「オカピ」というのはピグミーの言葉で、「森の馬」という意味があるそうです。

野生のオカピは森で単独か、メスの場合は親子で生活しています。しかし野生のオカピは非常に警戒心が強いことから、詳しい生態は分かっていません。

 

キリンの先祖!?

ウマのような体型やシマウマのような模様から、シマウマの仲間だと思われがちですが、実はキリン科の生きもの。よく見ると2つに分かれた蹄(ひづめ)を持ち、オスの場合、頭部に毛皮に覆われた2本の角があることそして、青白く、耳まで届く長い舌を持っています。

実際、これまでの研究から、密林の中で暮らすオカピの仲間から、キリンが生息する草原に適したものへ進化したのが、現在私たちが「キリン」と総称する動物になったと考えらと考えられています。オカピ科というものがあっても良い気がしますが、オカピよりもキリンの方が先に発見された見つかったこと、オカピが発見された当初はシマウマの仲間とされていたことから現在のキリン科に分類されているのだとか。

 

環境破壊

オカピの個体数減少の原因は、長年にわたるコンゴ民主共和国の内戦と環境破壊です。

コンゴ民主共和国は、かつてベルギーの植民地であった時代から、植民地政府により金や銅の採掘が盛んであり、その世界有数の豊かな地下資源の利権をめぐる争いは、植民地支配からの独立後も、同国に暗い影を落とし続けていました。

独立以来常に発生していた内戦によって、世界有数の豊かな森林が破壊されるだけでなく、内戦で追われた多くの難民たちが、安全な場所を求めて森林の奥深に住み込み、焼き畑農業などで森を開き、食料として野生動物を捕獲しました。そこに住み込んだ人たちはオカピが希少な存在であることを知りません。また、不安定な政情では、密猟者も増えます。しかしながら、こうした状況下では野生動物の保護も命がけとなります。

2012年、コンゴ民主共和国では、保護区内のゾウの密猟と金の盗掘を妨害された報復として同国エプールにあるオカピ保護プロジェクトの施設が襲撃され、施設で保護されていたオカピ14 頭全頭、レンジャーなど6名が殺害、施設は放火され、施設がある町では略奪が起き食料が全くないなど、甚大な被害が発生しました。これも保護区や野生動物の保護の理解が十分ではないこと、また同国内の貧困や格差の問題が生み出した悲劇の一つでもあります。

また近年では環境破壊の原因の一つとして携帯電話などのバッテリーに使われるのがレアメタル(希少金属)の発掘が挙げられています。

レアメタルの世界有数の発掘地が、コンゴ民主共和国のイトゥリの森周辺にあります。携帯電話は世界的に普及したことから、レアメタルの需要は高まりました。レアメタル採掘のために作られた道が森を分断します。一本の道を通すだけでも、その森の生態系のバランスは崩れ、動物たちの餌場や繁殖相手を探すための移動 経路が無くなります。その結果、近親交配によって遺伝子劣化が起こります。こうした状況下の中でオカピは減少していきました。

1000万年も前からひっそりと森中で生息し、20世紀に人間が発見したオカピ。限られた場所でひっそりと暮らしていたのに、人間の環境破壊によってその場所を奪われてしまったのです。レアメタルの利権を争うコンゴ民主共和国の内戦は、スマートフォン、携帯電話を使う私たち日本人にとっても、身近な問題です。わたしたちの生活が豊かになる一方で、こうした犠牲が生まれているのです。

 

よこはま動物園ズーラシアで3度の繁殖成功

オカピは全世界のオカピを合わせても10000頭ほどしかいないと推測されています。そして、妊娠期間が420日から450日と長く、2年に1頭ほどしか子どもを産めません。世界的に繁殖に成功した例も少ないです。

しかし、よこはま動物園では、これまでもオカピを飼育している世界の動物園と連携し、オカピの繁殖や、保護活動である「オカピ保護プロジェクト」に協力してきました。横浜市内のズーラシアでは3代のオカピの繁殖に成功し、現在は4頭が生息(日本国内では合計6頭が生息)しています。

よこはま動物園では、2012年のコンゴ民主共和国の襲撃の際、被害を受けた施設を、早急に立て直すため、オカピ保護プロジェクトからオカピ飼育園に対して緊急救援資金の要請を受けました。そこで横浜市内の3動物園(よこはま、野毛山、金沢)をはじめ市内の公園等で募金箱を設置し多くの方からご支援を募り、オカピ保護プロジェクトに寄付する取り組みをはじめました。この救援資金は、現地で保護活動に従事しているレンジャーや関係者への給料、施設の復旧、機材の調達、住民の食料、医療品等の確保に使われます。

個体数が人為的な理由で減少していく中で、私たちが行うべきこと、できることはまだあります。日本から、少しでも多くのオカピを守れればと思います。

 


大妻女子大学:栗原 亜実