今月の本:しんでくれた
詩:谷川俊太郎
絵:塚本やすし
発行:佼成出版社(2014年)

 

 

 

「しんでくれた」

強い印象を残るタイトルだが、絵本では人間の残酷さ、冷酷さを描いた訳ではない。谷川俊太郎さんの詩とともに、塚本やすしさんの力強く迫力のある絵によって私たちが生きるために食べないといけない、その「食」への感謝の気持ちを描いた本だ。

「いきものは いきものをたべなければ いきていけません。 にんげんは ほかのいきもののおかげで いきているのです」と谷川俊太郎さんが述べるように、私たち人間は生きるために、主食となる米やおかずとなる魚、肉、野菜などいろいろなものを食べないといけない。

私たちは、命を「いただき」、生かされている。この本はそんな日常に感謝し、私たちが生命を奪うことで生かされているということに改めて考え、気づかされる内容だ。

絵本は文字も少なく、本当にあっという間に読めてしまう。しかし、簡単だからこそ読み手によって多様な解釈が可能だ。

大きな牛の絵の後に、大きなハンバーグの絵。色々な想いが胸をよぎった。私たち人間は生きものを殺し食べている。私たち人間は生きものを食べなければ生きていけない。日常生活の中で当たり前のように行われている「命を食べる」ということを、日々の日常の中で忘れかけていた「感謝」の気持ちを思い出した。

 

「いただきます」

当たり前のように言っているこの言葉に込められた「私の命のために動植物を頂きます」意味を改めて思う。ハンバーグとして食卓に上るだけでは、これがかつて牛として行き、と殺され、解体され、お店で売られ、食卓に並べたことを想像することは難しい。無機質になった食事には声明を感じにくいかもしれない。しかしどんな食べ物にも、野菜にも、お米にも、命が宿っていた。人が生きていくうえでたくさんの犠牲になる命。その命を知り、私たち人間自身が生きていくために必要なたくさんの命を守ること。生物多様性の保全の意義の側面の一つでもある。

「いただきます」この言葉を作った先人は、きっとこの思いがいつも強く胸にあったのだろう。

FAO(世界国際連合食糧農業機関)によると、日本人は1940万トンの食べ物を捨てている。これは、世界食糧援助物資の3倍の量に上り、食糧の廃棄率では世界一の消費大国アメリカを上回り、廃棄量は世界の食料援助総量600万トン(WFP)をはるかに上回り、3000万人分(途上国の5000万人分)の年間食料に匹敵する。またに「残飯大国ニッポン」だ。

私たちは一度立ち止まって、この現実を受け止め、もう一度、「命をいただく」ことを考える必要があるのではないか。この本は、きっとあなたに、その考えるきっかけを与えてくれるはずだ。