新宅広二「すごい動物学」 永岡書店
私たちは、広く人間も、ゾウや犬と同じ動物だということを忘れがちではないでしょうか。
人間の方が、動物よりも優れていると思い込んではいないでしょうか。
そんな私たちに、地球上に住む様々な動物の驚異を教えてくれるのがこの本です。
すべての章のタイトルに「すごい」がついていて、「すごいカタチ」や「すごい怖い」など、動物が持つ身体能力や繁殖能力の高さを、わかりやすく、おもしろく教えてくれます。
著者の新宅広二さんは、イギリスBBCのドキュメンタリー映画「ネイチャー」の日本語版監修などを行っている動物行動学のスペシャリストで、動物園での勤務経験も持っています。
そんな著者が動物に対する科学的な研究と、経験に基づいて執筆した内容は、「なぜパンダはかわいく見えるのか」「草食男子の語源である草食動物は本当に大人しいか」などの接しやすいテーマとは裏腹にとても理論的で、「なるほど」と納得することばかりです。
こう書くと固い本のようですが、かわいらしい表紙からもわかるように難しい単語は一切ありません。
さくさく読み進めながら、子孫を残すために進化し続ける動物の魅力にはまっていきます。
さらに、この本をお勧めする理由がもう1つ。
上のような動物学の視点から、人間について触れられていることです。
本の中では、人間も、未だにずいぶん「動物的」だと紹介されています。
緊張すると手汗を書いたり、気まずいと髪を触ったり、これらの動作は野生の動物にみられる習性だとか。
一方で、個体が爆発的に増えても未だに自滅していなかったり、殺す目的で戦ったり(戦争)と例外の多い動物だとも指摘されています。
ただ、争いを避ける手段として「笑い」を進化させてきたのも人間だけだそうです。
筆者は本の中で、「動物は進化の過程で様々な社会的構造を手に入れた。完璧ではないものの、その環境で何らかの優位性やメリットはある」と述べています。
人間は決してパーフェクトな生き物ではなく、試行錯誤を繰り返しながら進化してきた動物なんだと再認識させられます。
まずは動物と人間を知るところから。
そのきかっけに最適な1冊だと思います。